部屋探し新時代!2020年度人気設備ランキングで検索競争に生き残るための戦略
毎年恒例、全国賃貸住宅新聞の「賃貸住宅の人気設備ランキング」2020年度版が発表されました。このランキングは全国の賃貸仲介・管理会社が「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」「この設備がなければ入居が決まらない」の2つの視点から選出した人気設備を集計したもので、シングル・ファミリーそれぞれのカテゴリで順位付けがされています。
賃貸経営者にはチェック必須の同ランキング。しかし単純に「インターネット無料や宅配ボックスなど上位の人気設備を導入すればOK!」というわけではないのが、空室対策の難しいところです。
■部屋探しの変化+コロナ禍で内見数と店舗訪問数の減少が加速
空室対策の際、ニーズとともに考慮したいのが、部屋探しをする人々の動向です。リクルート住まいカンパニー社「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」によれば、不動産会社の店舗訪問数は平均1.5店舗、内見数は平均2.7件と、どちらも過去最少を記録しました。
これは首都圏の結果ですが、「訪問店舗数減少・内見数減少」の傾向は全国的に拡がるものでしょう。10年ほど前から顕著になってきたこの傾向は、住みたい物件を自ら探し出すインターネット検索型の部屋探しの一般化、そしてスマートフォンの浸透ともリンクします。
不動産情報サイト事業者連絡協議会が2019年10月に発表した「『不動産情報サイト利用者意識アンケート』調査結果」によれば、今や不動産情報(※)をネットで探す際、スマートフォンで探す人は全体の90%超。特に20代以下では95%超を達成しており、若年層の部屋探しが手元のスマートフォンから始まっていることが分かります。
※ 売買情報含む
そしてこの「まずスマホで検索する」「なるべく店舗に行かない」という部屋探しのスタイルは、今後さらに強く定着する可能性があります。なぜなら、今年はコロナ禍によって半強制的に「不動産会社に行かずに部屋を決める」ことが求められ、またそれがユーザー・不動産各社の工夫と努力によって「不可能ではない」と証明されてしまったからです。
自分のスマホで可能な限り物件を絞り込み、VR内見等でピンポイントに物件を確認し、最後に実際に部屋を見て(あるいは部屋を見ることなく)申し込みを決定する――、そんな「新しい部屋探しの様式」が確立されつつあるのです。
■WEB検索競争に生き残る入居者ターゲットに合わせた設備選びを
こうした入居者の動向・部屋探しのスタイルの変化を鑑みた際、空室対策時に重視したいのは「WEB検索条件」とのバランスです。
人々が好みの部屋を探すにあたって、頼りは不動産ポータルサイトの検索条件。「バストイレ別」「2階以上」「エアコンつき」など、自分の求める条件を次々と指定していき、最終的に表示された数件が問い合わせ対象となるわけですが、このプロセスは賃貸経営者から見れば生き残り競争そのものです。条件を備えていない時点で、所有の空室は問い合わせ候補から永遠に外されてしまいます。人気設備ランキングを参考にするとしても、激化するWEB検索競争に勝ち残れるか、という視点から導入設備を検討する必要があるのです。
たとえば、24時間利用可能ゴミ置き場。今年も人気設備ランキング7位で、また前出の賃貸契約者動向調査でも4年連続で満足度1位を獲得する人気ぶりですが、実は大手ポータルサイトSUUMOやHOMEʼSなどには検索項目が用意されていません(※2020年10月1日現在)。つまり、せっかくコストをかけて実装しても、24時間ゴミ置き場は「WEB検索競争」という舞台では武器にならないのです。もちろん、内見時・入居後における効果は抜群なのですが、そもそも検索競争に勝ち残れない・内見されない物件には無用の長物。まずは「インターネット無料」「室内洗濯機置き場」といった人気検索条件の実装を優先すべきでしょう。
入居者ニーズが気になるものの、空室対策として導入する設備を選ぶ際は費用との相談となるのが現実です。予算には限りがあり、どの設備も万能ではない以上、入居者ターゲットを考慮した組み合わせや諸条件との調和によって、時代に合った訴求力ある部屋作りをすることが重要。スマホ中心のライフスタイルにアフターコロナ、非接触型部屋探しの流行…と変化の激しい昨今、新時代は「ターゲットとする入居者」が「WEB上で内見したくなる物件」を目指すことが満室への近道です。