不動産登記法の改正案成立!「相続登記」の義務化、あなたの土地は大丈夫?


2021年4月、不動産登記法の改正案が可決・成立し、土地や建物を相続した際の「相続登記」が義務化されることとなりました。改正法は2023年4月までに施行される予定ですが、施行後は登記義務を怠った者に10万円以下の過料(いわゆる罰金)が課されることとなります。所有不動産の登記がきちんとされているか、早めに確認したほうが良さそうです。

【放置のデメリット大。情報を正して子や孫の負担を軽減】

今回の改正によって、不動産登記法には第76条の2として次の記載が加わりました。
「(一部抜粋)相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」

これまで相続時の所有権移転登記が義務でなかったが故に、登記の名義が古いままとなっている不動産、もはや誰の所有物か分からなくなっている不動産が今の日本には数多く存在します。よくあるのが、相続時にきちんとした分割協議や手続きが行なわれなかった結果、実家等の不動産の権利がなし崩し的に子や孫の代まで複数の相続人によって共有されているケースです。

「実家の父が亡くなり、一人息子の自分が家を相続することになった。しかし実家の登記を確認すると、父だと思っていた名義が祖父の名前。父は5人兄弟の末っ子、どうやら5人の共有で相続したようだが、数年前に父の兄(伯父)も亡くなっていて、権利を相続しただろういとこの連絡先も分からない…」 この例の場合、一人息子の「私」は相続人ら全員とどうにか連絡を取って、少なくとも「法定相続人全員の名義の共有登記」をしなければ、改正法下では登記義務違反となってしまいます。今後のトラブル防止や実家のスムーズな建て替え・売却を目指すなら「単独登記」が理想ですが、義務を果たす手間と費用はさらに膨らむでしょう。登記情報は時間が経つほど是正が大変になります。子や孫に負担を遺さないためにも、また、デメリットを最小に留めるためにも、できるだけ早い段階で情報を正すことが大切です。

【登記の状況で動きも変化。まずは法務局で現状確認】

不動産の現況を調べる際は、法務局で登記事項証明書を発行してもらいましょう。不動産に関する情報が全て載っており、所有者の名義が誰かも分かります。証明書を発行してもらうためには地番・家屋番号を伝える必要がありますが、分からない場合でも一般の地図を元に問い合わせれば教えてもらえます。 なお、証明書に記された権利者が既に亡くなっているなど登記情報が古い場合、採るべき行動は主に2つです。

1.権利者が自分だけであることが明らかな場合

相続登記を行ないます。登記には遺産分割協議書や戸籍謄本等の書類のほか、登録免許税や司法書士報酬等の支払いが必要です。

2.権利者が複数いる場合

先述の通り他の相続人(権利者)と連絡をとって、共有登記または権利関係を整理したうえでの単独登記を目指します。改正法施行後は、新設の「相続人申告登記」という法定相続人である旨の申告制度を利用して、ひとまずの登記義務を果たすことも可能になります。

複数回分の相続が未登記の場合には、共有者を探し出せずに仕方なく共有登記となるケースも多くなりそうです。そのため今回の改正では、民法の「共有」にまつわる条文が大きく変更され、「共有者不明の場合には、裁判所の決定を得るなど一定の条件下に限り、判明している共有者のみでの用途変更や売却を可能とする」という救済措置も用意されました。高齢化に伴う相続増加・所有者不明土地増加対策として、今回の法改正ではさまざまな相続・登記のルールが変更されています。新法施行までにしっかりと情報収集を行ない、できる対策から早めに行なっていきましょう。

2021年06月13日