解禁間近!賃貸経営者が知っておきたい電子契約の仕組みと影響
紙から電子へ、世の中の契約行為が急速に移り変わりつつありますが、不動産も例外ではありません。不動産賃貸の電子契約は、2022年5月までに全面解禁される見通しです。果たして電子契約の普及は、業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。
☑そもそも電子契約とは?
紙で交わす契約書の代わりに、電子データで契約を交わすのが電子契約です。紙の契約書では当事者の署名と捺印が必須でしたが、電子契約では「電子署名」という仕組みによって「誰がいつ、どの文書の内容に同意したのか」を証明し、契約を成立させます。この電子署名がされた契約書データは、書面の契約書と同等の法的効力を持ちます。
ちなみに賃貸借契約は、「民法」のうえでは当事者間の合意さえあれば口頭でも成立する諾成契約であるため、本来は電子化の容易な契約です。しかし、契約に宅地建物取引業者(宅建業者)が介在すれば「宅地建物取引業法(宅建業法)」が、定期借地・定期建物賃貸借といった契約形態を選べば「借地借家法」が関わることになり、こうした法令には「書面での作成・交付」が義務付けられた書類が少なくありません。例えば、取引時に宅建業者に義務付けられている「35条書面=重要事項説明書」「37条書面=契約書」などはその代表ですが、これまでは不動産取引における各種の「書面の義務」が電子化の妨げとなっていたのです。
しかし、2021年5月に「デジタル改革関連法」が成立したことで、宅建業法や借地借家法も改正に。各種書面の電子化が容認されたことで、不動産取引はついにデジタル化へと舵を切ることになったのです。
☑電子契約で何が変わる?
一方で、気になるのは賃貸経営者への影響です。電子契約普及のメリットは主に次の3つでしょう。
①契約締結/賃料発生までが早くなる
②署名・捺印・郵送等の処理からの解放
③WEB手続きを好む入居者から選ばれる
電子契約の最大のメリットは「早さ」です。書類の郵送がなくなれば、その分だけ契約締結までの期間や賃料発生までの期間の短縮が期待できます。また、契約締結前のキャンセルの発生率も低下するかもしれません。
加えて近年は、「契約や支払いはオンラインで素早く済ませたい」「契約の類はPCやスマートフォンで管理したい」という借主側のニーズも増加中です。手間や時間のかかる手続きを避けたい借主にとって、電子契約対応の物件はひとつの魅力として映るはずです。
☑電子契約締結の流れ
もうひとつの電子契約のメリットが「利便性の向上」です。「PCは苦手で、電子契約なんて大変では」と不安な方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの電子契約は紙の契約よりも手間のかからない操作を目指して開発されています。慣れれば手元のスマートフォンで、ものの数分で手続きを完了できるでしょう。
サービスによって異なりますが、大まかな電子契約の流れは以下の通りです。
事業者署名型(立会人型)の場合
事業者署名型であれば、貸主・借主の双方がシステムにログインし、契約内容を確認したうえで「承認する」だけ。賃貸経営者に必要なのは、メールアドレスとPCやスマートフォンなどの操作端末くらいです。
もちろん、電子契約が普及した後でも、従来の書面での契約が無効になるわけではありません。どちらかを選べるようになるだけと考えれば、電子化普及を不安に思う必要もないはずです。しかし、電子契約が業界を変える大きな変革であることは間違いないでしょう。変化を実体験できるせっかくの機会です、利用依頼があった際はぜひ電子契約にチャレンジしてみてください。