隣地から「竹木の枝の越境」、どうする?
新緑のまぶしい季節ですが、これから夏にかけて本格化するのが「草木の成長」と、それに関わるトラブル。厄介な事態に陥る前に、法律関係の正しい知識をアップデートしましょう!
Q 土地の所有者は、隣地から竹木の枝が境界線を越えて伸びてきたときは、自らこれ を切除できる。◯か×か。(宅地建物取引士試験 平成16年 問7)
A 解答と解説
2022年5月現在、正解は×です。竹木の「根」は許可なく切除が可能ですが、隣地から伸びてきた「枝」については勝手に切ることができず、隣地の所有者に枝を切るようお願いをするしかできません(民法233条)。宅建士試験の王道問題でもあるため、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかしこのルール、2021年の民法改正によって、来年4月からは「一定の条件を満たせば枝も切れる」に変わるので要注意。その条件は次の3つのうちのいずれかです。
ア)竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の 期間内に切除しないとき
イ)竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
ウ)急迫の事情があるとき
主には「隣地の所有者に切らせる」ことの過大な労力を鑑みての改正ですが、背景には、社会の高齢化等に伴って増加する空き家・所有者不明土地の存在もありそうです。今後も「所有者不在」の土地が増えるとすれば、越境された側が自分の力で財産を守れる規定も必要でしょう。
手入れ不足の庭木が入り込めば、物件の外観が損なわれるばかりか、虫の発生や火災、さらには枝経由での空き巣の侵入など各種リスクも高まります。普段から近隣と良好な関係を築いて枝の切除をお願いしやすくする取り組みは必要ですが、「お隣さんが認知症になってしまった」「誰がお隣の家を相続したのか分からない」という時に、自分で枝を切除できる今回の改正は、賃貸経営者の皆さんにも心強く感じられるのではないでしょうか。