新型コロナ騒動でテレワーク需要が急拡大! 「職住融合」で賃貸トレンドはどう変わる?

中国湖北省武漢市における最初の発生確認以降、未だ世界に大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症。東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、日本全国に緊急事態宣言が発令されるなど、企業や個人の活動が大きく制限される事態となりました。

一方で、今なお予断を許さない状態が続くからこそ、急拡大しているニーズがあります。事業継続の必要に迫られ、各企業が一斉に取り組んだ「テレワーク」にまつわる需要です。

■トレンド予測「職住融合」が新型コロナで全国的に急拡大

テレワークとは、「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」のこと。今回の騒動で急激に普及した「在宅勤務」も、テレワークの一種として扱われます。

人々を「通勤」から解放するテレワークは、もともと東京オリンピック・パラリンピックで予想される深刻な交通混雑の緩和策として期待され、東京を中心に政府主導で導入が進められていました。新型コロナウイルスの騒動がなくても、2020年は「テレワーク元年」となり、緩やかに普及が進んだことでしょう。ところが、当の五輪は延期となり、企業は全国的に社員の出社を自粛させる事態に。『職住融合』というキーワードを2020年の住宅トレンドとして予測したリクルート住まいカンパニー社も、まさかこのような形でテレワーク元年が訪れ、職住融合が拡大するとは夢にも思わなかったはずです。

職住融合は、テレワークの中でも特に在宅勤務の普及によって「住まい」と「職場」が融合し「職住近接」以上の距離感になる、という予測から生まれた造語。多くの人や企業が在宅勤務を体験したいま、住まいに職場としての快適性を求める声、立地に縛られない自由な働き方を求める声など、新しいニーズが生まれています。

■職住融合で住まいに求めるニーズが変わった

今回の全国的な「在宅勤務体験」は、多くの人に2つの気づきを与えました。ひとつは、自宅に仕事場としての環境が整っていなければ在宅勤務は難しい、という気づき。もうひとつは、自宅に環境さえ整っていれば、通勤からも解放されてもっと自由に働けるかもしれない、という気づきです。

特に後者の気づきは、今後の不動産市場にも影響を与える可能性大と言えます。なぜなら、通勤から解放されるということは、人々が住まいを選ぶ際に、都心からの距離や最寄駅からの徒歩分数などをそれほど考慮しなくてもよくなることを意味するからです。

これまで不動産は「立地」「交通の便」が絶対的な価値を誇っていましたが、通勤が住まい探しの前提から外れれば、事情は少し変わってくるでしょう。これまで「立地が悪いから」と諦めていた物件にも、価値の見直される機会が訪れるかもしれません。

事実、リクルート住まいカンパニー社の調査(※)によれば、約57%の人が「テレワークができるなら、通勤時間が長くなること(遠方への引っ越し)を許容できる」と回答しているとのこと。静かな環境や自然の豊かさ、実家からの距離や子育てのしやすさなど、「通勤時間」を考慮しなくていいなら優先したい、という条件は多々あります。会社から近いものの狭くてうるさいお部屋と、会社から遠いぶん広くて在宅勤務のしやすいお部屋であれば、テレワークの普及はおそらく後者の価値を高めていくことでしょう。

■自宅に仕事環境整備をプラスして空室対策に

では、実際にテレワークニーズを捕まえるには何をすればいいでしょうか。まず考えられるのは、最初から快適な仕事環境が備わったお部屋の提供です。

昨今は仕事をするうえでインターネット環境が必須である一方、なんでもスマートフォンで済ませられるからと、PCも持たず、家にインターネット回線も用意しない若年層が増加。彼らは今回の騒動で「ネット環境がなくて在宅勤務できない!」という問題に直面しました。人気の「インターネット無料」のお部屋は、今以上に注目を集めそうです。

また、住空間に予めワークスペースを用意することも検討できるでしょう。たとえば、仕事机、ワークチェア、手元照明、本棚など、すぐに仕事を始められる家具つきのお部屋や、DEN(デン)と呼ばれる1~2畳の独立空間が用意されたお部屋。空室対策としては多少コストがかかりますが、テレワークを視野に入れて部屋を探す人々の目にはきっと魅力的に映るはずです。

法人向けにテレワーク機能をアピールするという手もあります。企業によっては、自宅に作業環境のない社員のためにワークスペースを用意しようという動きもあり、まとまった空室がある物件は法人需要のチャンスかもしれません。仕事向けの家具に加えて、冷蔵庫や電子レンジ、コーヒーマシン、食器洗い機など、仕事環境を快適化する家電を用意すれば、企業のニーズとも合致。こうしたケースでは、一般的な賃貸借契約はもちろん、スペースシェア・時間貸しなど貸し方の工夫も検討できそうです。

決して望ましい形ではなかったものの、世界的に急速に普及したテレワークという働き方。どこでも働けるという発見は、不動産業界に決して小さくない影響を与えるはずです。果たして、テレワークは人々を満員電車や渋滞から解放し、不動産の価値さえも変えていくのか?

これからのテレワークの進化と住まいニーズの変化に注目し、先手を打っていきましょう。

※ リクルート住まいカンパニー「テレワーク×住まいの意識・実態調査」2019年

2020年06月10日