空き巣が増える季節 気になる防犯対策を古今の知恵に学ぶ


秋が深まるこの季節、目立ってくるのが空き巣被害。警視庁の月別認知件数を見てみると、空き巣被害は夏に減少するものの、秋から年末に向けて再び増加に転じることが分かります。9月以降は残暑も和らぎ窓を開ける機会も増えるほか、行楽シーズンで留守宅も多くなり、また日没も早まるため、空き巣には好都合なのでしょう。お持ちの物件でも注意が必要です。


ところで、昔の賃貸住宅の防犯対策はどのようなものだったのか、入居者を守るためのヒントを探してみましょう。たとえば江戸時代、庶民は「長屋」と呼ばれる横長の木造平屋に部屋を借りて住むのが主流でした。人がひしめく江戸の町では物盗りも珍しくなかったとのこと。多くの泥棒たちが暗躍するなか、長屋暮らしの人々も空き巣に目を光らせていたはずです。

■くせ者の侵入を防いだ町木戸、厳重な隣近所の監視網

江戸の防犯対策として特に効果を上げたのが「町木戸」です。当時は町ごとの境に木戸を置き、深夜から明け方まではその木戸を固く閉ざしていました。つまり、町木戸によって外部の人間が町内に入るのを制限し、犯罪を企てようとする者の往来を取り締まったわけです。

また、木戸そばの番屋には「木戸番」と呼ばれる門衛が複数置かれ、時間外に人が通行する際は拍子木を打ち鳴らして他の木戸番に知らせたり、通行人のせいでトラブルが起きないよう付き添ったりしたそうです。木戸番は番屋で暮らし、ひとたび事件が起きると日中でも木戸を閉めたと言いますから、24時間体制の防犯機能が働いていたと言えるでしょう。

一方で、個人宅の防犯対策はお粗末だったようです。商家にこそ錠前が見られたものの、当時の鍵は高級品。長屋では引き戸の内側に棒を突っ張らせる「しんばり棒」がやっとで、蹴破るだけで簡単に侵入できてしまいました。

しかし、空き巣に入られ放題だったわけではありません。先述の町木戸の活躍もありますが、何より当時の長屋は地域住民の濃密な共同生活の場。壁も薄く、隣の音は筒抜けだったと言われています。ですから、たとえ空き巣が留守宅に忍び込んでも隣近所の監視網が異変をキャッチ。江戸の防犯は町ぐるみ、地域ぐるみで成立していたわけです。

■窓からの侵入が6割強。現代の防犯対策を考える

現代でも地域単位で防犯意識が高いエリアもありますが、都市部になるほど地域のつながりや意識は薄れがち。空き巣から身を守るには地域頼みでなく各戸での防犯対策を強化しなければなりません。

警視庁の調べ(2020年9月)によれば、共同住宅等への空き巣の侵入は「窓から」が6割強と最も多く、次いで「玄関」が3割という結果。合わせて9割となっており、まずはこの2点が重点対策箇所と分かります。

<窓の対策>

入居者に戸締りを充分注意してもらうのが大前提ですが、空き巣が窓辺に近付かないよう、敷地内に「人感センサー付きライト」や「監視カメラ」、踏むと音のする「防犯砂利」を設置するのが効果的です。また、「防犯フイルム」を窓ガラスに貼ることで割られにくくして空き巣の侵入を防ぐのも有効。窓を厳重に守ることで、入居者への安全アピールにも繋がります。

<玄関の対策>

玄関で気を付けたいのはピッキングなどによる施錠開けです。ピッキングに強いとされる「ディンプルキー」や補助錠の導入は、空き巣の侵入を防ぐと共に入居者の安心感を高めます。また、窓・玄関ともに侵入原因の半数以上が無施錠、つまり鍵の閉め忘れであることを考えると、オートロック機能を備える「スマートロック」で対策するのも手。最新IoT機器としての訴求力の面からも検討できそうです。

町木戸や隣近所で悪を見張った江戸も今は昔。有用な防犯設備の導入で入居者の防犯意識を高め、犯罪発生の抑止と入居者満足度の向上に繋げていきましょう。

2020年10月13日