コンセプト賃貸に挑戦!猫好き入居者の心を捉える「猫部屋」をつくろう


引っ越しシーズンもピークを過ぎて、いよいよ4月。賃貸ニーズが下降する中で空室に入居者を呼び込むなら、装いをがらりと変える思い切った空室対策も必要でしょう。そこで検討したいのが、入居者ターゲットをぎゅっと絞った「コンセプト賃貸」という選択肢。敢えて尖った企画で物件を刷新し、他物件との差別化を図るとともに企画に共感してくれるファン(入居者)の獲得を目指す募集戦略です。

中でも最近のオススメは「猫部屋」というコンセプト。猫と人との快適な暮らしを追求する猫共生住宅の提供です。

【高まる猫人気。コロナ禍でさらに過熱】

近年、高まりを見せる猫人気は、コロナ禍の影響を受けてさらに勢いを増したと言われます。事実、一般社団法人ペットフード協会の調べでは、2020年中に新たに飼われた猫は約48万3000頭。前年より約6万7000頭も増えています。猫は生活音が静かで散歩も不要と、他のペットに比べて飼いやすい点が数字を押し上げているようです。

さらに、昔から人気を二分してきた犬と比べても、かつての飼育頭数の圧倒的劣勢を逆転、今では猫が100万頭も多い状況とのこと。飼い主も単身世帯の割合が増えており、賃貸業界においても猫人気は無視できないものとなっています。

【猫部屋づくりは猫用アイテム選びからスタート】

さて、一口に猫部屋といってもつくり方はアイデア次第。まずはお試し程度に始めたいという場合は、猫好きのハートを射止めそうな猫用アイテムを「買って、置くだけ」でも大丈夫です。ただし、猫部屋としての集客力は、やはり徹底的にコンセプトに特化したほうが高まります。予算や市場と相談のうえで、導入する設備を決めましょう。

アイテム①キャットタワー

猫の遊び場・休息場所となる「キャットタワー」は、愛猫の運動不足やリラックスできる空間を気にする猫好きにとって、あると嬉しい定番の猫用家具です。ただ置くだけのタイプと、天井と床とで固定する突っ張り棒タイプが主流で、どちらも種類豊富。設置も手軽で、猫部屋づくりの入門アイテムといえるでしょう。


アイテム②キャットウォーク   

行動範囲の限られる室内で、猫が自由に歩き回れる「キャットウォーク」も、猫好きに人気のアイテムです。据え置き棚タイプならインテリアとしても見栄えがするうえ、部屋の収納力もサポート。また、施工のコストは掛かりますが、壁付きのステップタイプや天井吊り下げ式なら、狭いお部屋でも頭上等のデッドスペースを有効活用して導入できます。


アイテム③クッションフロア

適度に柔らかい「クッションフロア」の床材にすることも、猫部屋づくりのポイントのひとつ。高所から飛び降りることの多い猫にとって、硬く滑りやすいフローリングの床は、足腰のケガや不調の原因になり得るからです。

また、防水性の高いクッションフロアは、猫の尿や吐しゃ物から建物を守る効果も発揮します。猫の健康面、そして退去後の原状回復の面からも、クッションフロアは猫好きに嬉しい床材なのです。


アイテム④ペット用クロス

原状回復といえば、壁や柱への猫の爪とぎ被害。賃貸経営者だけでなく、猫好きにとっても悩みの種です。その点、頑丈な「ペット用クロス」を導入した部屋なら、爪をといでも傷がつきにくく安心です。オススメは、見切り材で「腰壁」風に上下を分けて、下半分だけペット用クロスを貼る施工法。割高なペット用クロスの費用を抑えつつ、見た目のオシャレさも演出できます。

そのほか、キャットハウスや爪とぎグッズ、猫用扉、脱走防止扉など、市場には実に多くの猫用アイテムが登場しています。猫と人の両方の住み心地を考慮しつつ、理想の猫部屋に最適なアイテムを探してみましょう。

【リスク対策はしっかりと。猫部屋の正しい運用方法】

猫部屋づくりは、お部屋そのものをつくり込むだけでなく、契約条件やルールなどの運用方法を工夫することも欠かせません。トラブルが起きても確実に対処できるよう事前準備を徹底しましょう。

運用のコツ①

敷金・礼金を増やして原状回復費用を担保する

猫部屋のみならずペット可物件を運用するなら、押さえておきたいのが膨らみがちな原状回復費用の備えです。敷金・礼金を1~2ヶ月分「積み増し」したり、敷金の一部を返還せず償却する「敷引き」を取り入れるなど、契約時点で原状回復費用の担保を増やしておきたいものです。

もちろん、初期費用が高額になることで入居付けに悪影響が出る不安もありますが、一方で、愛猫のためのお金を出し渋るような飼い主は、責任感にも疑問符が。不良借家人をふるいにかける意味でも、入居のハードルを上げることは有効といえます。

運用のコツ②

飼育内容を把握してトラブル防止

たとえ入居が決まっても、借主の飼育状況が悪ければ健全な猫部屋運用は叶いません。無用なトラブルを避けるためにも、契約時には必ず「ペット飼育に関する承諾書」とともに、「ワクチン接種証明書」「避妊・去勢手術証明書」等も提出してもらいましょう。

あらかじめ猫の情報を把握しておけば、万一の際の飼い主(借主)の特定も容易に。また、書類の中でも避妊・去勢手術証明書の提出は徹底したいところ。猫は発情期になると問題行動を起こしやすくなり、お部屋がダメージを負う可能性も高まります。未実施の場合は手術予定日を忘れずに確認します。


猫人気が高まる昨今、猫部屋は入居者を呼び込む「招き猫」となるかもしれません。運用面で管理会社の協力を仰ぎつつ、物件の新しい魅力づくりに挑戦してみましょう。

2021年03月21日