コロナ禍で急増の「置き配」トラブル。国交省がマンション管理規約標準モデル改正


今年6月、国土交通省は全国のマンションの管理規約のひな型となる「マンション管理規約標準モデル」を改正しました。理事会や総会がWEB会議システムによって開催される場合の想定など、昨今の生活スタイルの変化や新型コロナウィルス感染症の影響が反映された改正となりましたが、中でも注目を集めたのは「置き配」の扱いです。

【コロナを背景に置き配が急速に浸透】

パソコンやスマートフォン等からインターネット通販を手軽に利用できるようになったことで、ここ数年の宅配需要は右肩上がり。賃貸住宅業界においても「宅配ボックス」の需要が高まるなど、人々の買い物に対する考え方には大きな変化が見られます。その一方で、運送業界の人手不足や再配達の問題は深刻です。特に昨年からはコロナ禍の外出制限や巣ごもり需要も加わり、宅配利用の急増によって日本各地で配達の遅延も発生しました。

こうした問題の解決策として登場したのが「置き配」です。置き配は、荷物を受取人に直接渡すことをしなくとも、玄関先等の指定の場所に「荷物を置く」だけで配達を完了できる宅配方法です。非接触での受け取りが可能で、不在時にも再配達せずに済むとあって、コロナ禍のニーズにも合致。また、アマゾンジャパンや楽天といった大手企業が積極的に置き配を採用したことから、短期間で急速に浸透しました。

しかし、置き配が普及するにつれて目立ってきたのが、特にマンションやアパートなど集合住宅でのトラブルです。玄関前に荷物を置くだけ、というシステムが、防犯面や共用部の使い方の面で問題を引き起こしているのです。

【安心・便利の確保にはルールが必要】

置き配関連のトラブルで最も深刻なのが盗難・不法侵入といった犯罪行為です。コロナ禍以降、玄関前に置き配された商品を盗む、またはその目的で物件内に部外者が侵入するといった事件が各地で頻発しています。

また、分譲マンションにおいては、居室玄関前の廊下も「共用部」です。共用廊下に私物を置くことは多くの管理規約で禁止されているほか、消防法においても避難の障害となるものを置かないよう定められています。結果として、「置き配を使いたいのに管理規約のせいで使えない」「管理規約で置き配は禁止されているのにルールを守らない人がいる」といった不満が発生。さらには、子どもが荷物につまずいて怪我をしたり、逆に荷物が破損してしまったりといったケースも散見されるようになりました。

こうした事態に対して示されたのが、今回の国土交通省の標準モデルです。その中には次のような見解が示されました。

「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により、避難の支障とならないよう留意する必要がある」

言い換えるなら、「原則的に共用部の置き配は認められないが、管理規約で例外的に置き配を認めることは可能。ただしその際は建物ごとにしっかりとルールをつくるべき」といったところでしょうか。原則禁止としつつも、状況に応じて置き配を認めてもいいとするこの見解は、各マンションの管理組合に規約変更の流れを生みそうです。

そして、置き配トラブル回避のためのルール作りは賃貸物件においても必要になるでしょう。分譲マンションのように管理規約に縛られないとはいえ、賃貸物件においても同様に防犯・防災の問題は発生するのです。今後も通販利用は拡大する見通しです。入居者の安全・安心な置き配利用に配慮されたルール作りは、募集時の訴求力向上や入居満足度改善にも良い影響を与えるはずです。

2021年09月27日