税制に変化の兆し!?相続対策の定番、生前贈与はお早めに


いよいよ年末の足音が聞こえてきました。毎年12月は税制改正大綱が発表されますが、令和3年度の大綱(2020年12月10日発表)の内容は、「暦年贈与が廃止されるのでは!?」との情報もあり注目されていたことはご存じでしょうか。

もし廃止となれば、今後の相続対策に影響が出ることは必至。今のうちにできる対策を知ったうえで、少しでも早く行動開始するのが良さそうです。

【非課税贈与の基本、暦年課税制度にメス!?】

日本の贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に応じて課税される「暦年課税方式」によって課されます。ただし、この制度には年間110万円の基礎控除が用意されているため、年間110万円以下であれば非課税での贈与が可能。控除枠を活かし、毎年少しずつ非課税で贈与していく「暦年贈与」は、相続対策の基本として活用されてきました。

あえて「非課税」を許容してきた背景には、塩漬けになっている父母・祖父母世代の財産を流動させ、日本経済の活性化につなげたいという国の思惑があります。しかし、近年は後述の「結婚・子育て資金の一括贈与」「教育資金の一括贈与」といった特例も含め、非課税枠が本来の目的と異なる「節税策」として利用されるケースが目立つ状態に。「富裕層への優遇策だ」という批判の声も高まり、特例適用のルールも年々厳格化傾向です。

そして、令和3年度税制改正大綱には、今すぐの改正こそなかったものの、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、(中略)暦年課税制度の在り方を見直すなど、(中略)本格的な検討を進める」と明記されました。ついに暦年贈与廃止の噂の飛び交う事態となったわけです。

【改正は何年後? できる対策は今年のうちに】

いきなりの暦年贈与廃止は、社会のインパクトが大きすぎるため非現実的です。しかし、これまでの流れからも「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税」という検討は進みそうです。例えば、現在の日本の税制下では、相続発生3年以内の贈与は、相続税の扱いとなって110万円控除の対象外(暦年贈与の対象外)となりますが、同様の制度をイギリスは7年、フランスは15年、アメリカは無期限で運用しています。日本が現在3年である期間を5年、10年へと延長することは十分あり得る話です。

加えて、昨今はさまざまな場面で富裕層に対しての課税強化の風潮が見られます。賃貸経営者としては現行制度下で、どれだけ早めの対策を打っておけるかが将来の相続財産額を左右しそうです。生前贈与による節税を考えている方は、少しでも早いスタートを検討するとともに、年内駆け込みでできる対策は今年のうちに始めておきましょう。

●住宅取得等資金の贈与(2021年12月31日まで、次年度延長の見込み)

子や孫が自宅を取得・増改築するための資金として贈与をする場合、要件に応じて最大3000万円まで非課税となる。ただし将来、財産価値の高い自宅を相続させる予定がある場合は、小規模宅地等の特例の適用とどちらが節税効果が高いか比較検討を。

●結婚・子育て資金の一括贈与の特例(2023年3月31日まで)

子や孫に結婚・子育て資金として一括贈与をする場合、1人につき1000万円まで非課税となる特例。「結婚費用への充当は300万円まで」「50歳までに使い切れなければ残額に課税」「使い切る前に贈与者が亡くなれば残額に相続税を課税」など各種条件あり。

●教育資金の一括贈与の特例(2023年3月31日まで)

子供や孫に教育資金として一括贈与をする場合、1人につき1500万円まで非課税となる特例。「受贈者は30歳未満」「30歳までに使い切れなければ残額に課税」「使い切る前に贈与者が亡くなれば残額に相続税を課税」など、結婚・子育て資金贈与と似た各種条件あり。

2021年10月01日