本格稼働開始 賃貸住宅管理業法知っておくべき4つのポイント

賃貸住宅の適切な管理運用、そして管理にまつわる不動産オーナーの取引の安全を確保するべく制定された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、賃貸住宅管理業法)」。施行から1年間設けられた経過措置期間も終了し、2022年6月からはいよいよ同法も本格稼働となります。賃貸経営者として知っておくべきポイントをおさらいしましょう。

①業者登録制度

まず大きな変更点は、宅建業者と同様に、賃貸住宅管理業者の登録制度が敷かれた点です。賃貸住宅管理業法の規定する規模や業態に該当する「賃貸住宅管理業者」は、国土交通大臣への登録が義務化され、無登録で管理業を行なった場合には罰則の対象となりました。

登録が必要となるのは、賃貸人から委託を受けて「賃貸住宅の維持保全」または「賃貸住宅の維持保全+家賃・敷金・共益費その他の金銭管理」を行なっている、管理戸数200戸以上の業者です。登録業者には賃貸住宅管理業の登録番号が割り振られるため、賃貸経営者はその番号を検索システム等で確認することで、相手が登録業者かどうかの判別が可能です。

なお、管理戸数が200戸未満でも制度への登録は可能である一方、200戸以上を管理しながら無登録となっている業者に対しては、2022年夏にも国土交通省による立入検査が開始される予定とのこと。今後、管理業者と接する際は登録番号に注目してみましょう。

登録番号の例
国土交通大臣(00)第0000000号
※更新回数の表示(2022年06月時点では01または02)
▶業者検索システム
https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/chintaiKensaku.do

②重要事項説明の義務化

従来は、賃貸管理を行なう会社と管理委託契約を結ぶにあたって特別のルールはありませんでしたが、賃貸住宅管理業者には賃貸経営者に対する重要事項説明の義務が課されました。重要事項説明書には、管理業務の内容や実施方法、管理の報酬、敷金や賃料等の引き渡し方法、契約の更新や解除にまつわる取り決めなど、管理委託契約の内容が詳細に、分かりやすく記載されます。

賃貸経営者が内容を理解しないまま契約を結んでしまうトラブルを防ぐことが狙いで、既に実施している業者も少なくありませんが、今回改めて義務として規定されました。なお、賃貸住宅管理業者から重要事項説明書が交付されない、説明がなされない等の場合には、国土交通大臣への申し出が可能です。

③財産の分別管理

賃貸住宅管理業者が家賃や共益費などを集金する場合や、契約時の敷金を保管する場合には、賃貸住宅管理業者はそれらを自社の財産と区分して管理する「分別管理」が義務づけられました。

具体的には、賃貸住宅管理業者は自社固有財産を管理する口座とは別に家賃等を管理する専用口座を用意し、帳簿上でも明確に分別管理をしていることが分かる状態にすることが求められます。万が一、業者の経営が破綻した場合にも賃貸経営者の財産を保全できるほか、賃貸住宅管理業者の運転資金に家賃等が流用されてしまうトラブルを防ぎます。

④管理状況報告

賃貸住宅管理業者には、対象物件の管理状況を賃貸経営者に報告する義務も課されました。賃貸経営者には少なくとも年一回以上の頻度で、入居者からの金銭の収受状況や建物の状況、管理委託契約の中で取り決められた管理業務の状況、入居者からの苦情の発生状況やその対応の進捗などが報告されることになります。

そのほか賃貸住宅管理業者には、管理の責任者たる業務管理者の配置などさまざまな義務が課されますが、その一方で、これまで各社の判断で進められてきた「賃貸管理」の内容が明確になり、賃貸管理業に対する信頼性の向上、業界の透明化が期待されます。賃貸経営者としても、安心して管理を任せられるようになる賃貸住宅管理業法は歓迎すべきもの。今後の賃貸管理がいっそう発展することを期待したいですね。

2022年05月23日